あるひ。


 ある晴れた日、ある場所に、二人は暮らしていた。二人は、幸せそうに見えた。

「眠いね。」
「晴れていると、眠くなるからね。」
「明日も、晴れるらしいよ。」
「暑くなるかもね。」
「最近、暑くなってきたもんね。」
「そろそろ、散歩には向かない天気になるね。」
「そうだね。」
「うん。」
「じゃあ、明日は、家にいようか。」
「そうしようか。」
「あ。でも、買い物をしないと、何もないよ。」
「そっか。飢え死にしてしまうね。」
「そう。飢え死に。」
「まあ、そうなってもいいけど。」
「いや、よくないと思うけど。」
「あはは。」
「笑うところじゃないから。」
「まあ、明日は、買い物にでも行こうか。」
「うん。そうしよう。」
「そうしましょう。」
「何が食べたい?」
「何でもいいよ。」
「それが一番、困る。」
「だって、嫌いなもの、ないから。」
「それは、知ってるけど。困る。」
「買い物しながら、考えればいいじゃない。」
「そうやって、いつも同じメニューになるんじゃない。」
「まあまあ。それもまた、いいじゃないか。」
「ふーん。」
「うん。」
「……。」
「……。」
「なんか、妙に、悲しくなるときがある。」
「なんで?」
「わかんない。から、妙に。」
「それは、こうして、一緒にいても?」
「そう。」
「僕は、そういうの、ないな。」
「そうなんだ。」
「そうなんです。」
「ふーん。」
「ああ、でも。」
「うん。」
「寂しくなるときは、あるよ。」
「寂しく…。」
「そう。寂しく。」
「それは、こうして、一緒にいても?」
「あら。僕と同じ台詞。」
「いいから。真面目に答えなさい。」
「あはは。そう。うん。一緒にいても、なるね。」
「ふーん。」
「そういうもんなんだよ。」
「そういうもんか。」
「……。」
「……。」
「…。」
「帰ろっか。」
「ああ。うん。帰ろっか。」
「帰ろう。」
「帰ろう。」

 ある晴れた日、ある場所に、二人は暮らしていた。
 それは、とても、幸せそうに見えた。
 当の本人たちが、気づいてないけれど。



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