うそぶき


 あれ?あっちゃん?どうしたの。珍しいね、食堂に来るなんて。え?そんなことないよー。それだったら、あっちゃんのほうが、いっつも、ボーっとしてるじゃない。そうだよ。はは。変な人だねえ、あっちゃんって。…何もないよー。本当、本当に。もう、そんなに言わなくたって、大丈夫だってば。なに?心配してるの?ガラでもない。やめてよねえ。大丈夫だよ。そんなに見ないでよー。ご飯食べられないじゃん。ほら、あと十分しかないじゃない。あっちゃん、お昼は?えー、なにそれ。ずるいよ、自分ばっかり。私だけお昼抜きなんて、ありえないじゃん。もうー。え、あっちゃん、戻っちゃうの?そりゃ、食べるの遅くなっちゃうけどさ。なんだよー、結局邪魔しにきただけなの?笑ってないでよ。次の講義遅れたら、あっちゃんのせいだからね。そんなことない。あっちゃんのせい。うわっと、時間ない。じゃあね、あっちゃん。私、行けなかったら、次の講義のノート、とっといてね。

 お、あっちゃん。どこ行ってたの?食堂?なんでまた?ふーん。まあ、いいや。あっちゃん、次の講義出る?ああ、なんか出る気しないからさ。あっちゃん、出るなら、ノートとっといてくんない?げ。夕飯奢れってか?マジかよ。今月ピンチなんだぞ。わかってんのか?まあ、いいや。あそこのでいいだろ。しょうがねえな。大盛りにするから。勘弁してよ。はあ、よかった。ありがとね。じゃあ、あっちゃん、よろしく頼むわ。は?勘が鋭いなあ、あっちゃんは。そうだよ、会いたくないから、講義出ないんだよ。じゃあな。

 あっちゃんだー。やほー。相変わらず、のんびりやさんだねえ。んふふ。え?わかるー?いいことあったのー。へへへ。あっちゃんには言ってたでしょー。ほら、彼のこと。なんかねえ、ダメかなあ、なんて思ってたんだけど。んー、ここで言っちゃうのもったいなーい。ねね、今日の夜、私んちに来て。ね。あっちゃん、どうせ、暇ちゃんでしょー。ね。わ、先生来ちゃった。じゃあ、今日の夜ね。絶対ね。

 いやあ、ありがとね。助かったよー。ありがたくコピーさせていただきます。え?あいつ、講義出てなかったんだ。そうなんだ。だったら、出ときゃあよかったなあ。そしたら、あっちゃんに奢る必要もなかったのに。まったく。…うーん。もう、この講義出ないかも。わかんね。今のところは、出る気ない。だってさ、出たら会っちまうんだぜ。そんなん耐えらんないよ。俺、まだ、好きなんだぜ。なんだかんだ言ってきたけどさ。はい?あの子は関係ないよ。なんであっちゃんが知ってんの?そんなこと言ってんの?ありえねえよ。あいつ、もしかして、そのことで怒ってたのかな。そう思う?そうなのかー。あー。あっちゃん、奢るの今度でいい?ごめん。絶対、奢るし。うん。じゃあね。

 あっちゃん、遅いよー。もう、待ちくたびれちゃったよー。早く早く。中入って。座って。紅茶とコーヒー、どっちがいい?コーヒーね?今日ねー、彼、目が合ったのに、避けられちゃったの。なんでだと思う?んー、でも、絶対、目が合ったの。私、何かしたかなー。よし、できた。はい、コーヒー。インスタントだから、まずいよー。へへ。はあ。ん?いいことって?あー。なんか、今日、避けられちゃったから、自信なーい。彼ね、付き合ってくれる、って。言ってくれたの。でも、夢だったのかなあ。うん。本当に言ってくれたよ、本当だよ。嘘だったのかなー。ああ、もう、わっかんなーい。あっちゃんー。うー、ありがと。頑張るね。自信もつね。あっちゃん、泊まってく?そうしなよ、もう遅いから。じゃあ、お布団敷くね。コンビニ行くの?ん、いいよ。いってらっしゃい。

 もしもし?あっちゃん?どうしたの、こんな時間に?しかも、あっちゃんが電話とか珍しくない?滅多にしないのに。あいつ、来なかったかって?ああ。来たよ、来たよ。でも、意味わかんない。誤解なんて、私はしてないよ。私は、ちゃんと自分で見たことで、決めたんだもん。ヨリなんて、戻さないよ。あっちが好きだって言っても、私はもう、好きじゃないもん。本当だって。もう、今日の昼から、あっちゃん、私に確認しっぱなしじゃん。大丈夫だってば。まだ心配してるの?あっちゃんてば。馬鹿だなあ。大丈夫だよ。もう寝るね。おやすみ。

 おはようー。あっちゃん、昨日は、ありがとう。ね。んふふ。早く、学校、行こう。今日は、話しかけられるようにね、頑張るの。あっちゃん、見守っててね。へへ。よし、行きましょうー。

 はよ、あっちゃん。昨日は散々だったよー。ったく。俺、どこかで、間違ったんかなあ。そうなんかな?でもさ、誰かがどっかで、何かをしたから、こういう結果になったんだろ。だったら、その誰かが、俺かもしんないってことになるだろ。あー、ダメだダメだ。朝っぱらから、こんな暗い話。やってらんねえ。やめやめ。なに?あの子と付き合っちゃえばって?馬鹿言うなよ。あっちゃんも、変なこと言うんだな。あいつと別れたこと、まだ、自分で認めらんないんだからさ。そういうの、俺、まだ、考えらんない。まあ、そのうちにな、考えられればいいけどさ。じゃあ、あっちゃん、講義始まるから。あっちゃんの暇な日に奢るよ。

 あっちゃんー。聞いて聞いて、今日、しゃべっちゃったー。さっきね、さっき。もう、久しぶりで、ドキドキしちゃった。馬鹿みたいに。んふふ。それでね、日曜日、デートしようって。へへ。よかったー。夢じゃなかったんだねえ。ありがとう、あっちゃん。私、頑張れたの、あっちゃんのおかげだから。本当だよ。んふふ。今度、何か奢るね。うん。じゃあね。

 あ。あっちゃん。もう、昨日の電話はなんなの?めっちゃ、ビックリしたってば。何の用事もないのに、電話するとかって、ありえないもんね。マジ、ビックリした。…まだ、心配してんの?大丈夫だって、何回も言ったじゃん。あっちゃんが、心配すること、何もないんだよ。大丈夫だよ。またこれから、いくらでもいいことあんでしょ。今まで、ちょっと、油断してたのかな、って思うよ。やっぱ、いつだって、すぐに崩れてしまうものの中に、いたんだよね。なんつってね。今度は、もっといい恋してやるよ。見ててよ、あっちゃん。私、すげえいい女になるから。今度、飲もうね。うん。あんがとね、いっつも。




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